臼井八幡宮の傍らに、周囲五丈余(約15メートル)の楠と、そこから東へ九尺(約2メートル70センチ)ばかり離れたところに、周囲一丈余(約三メートル)の楠が二本あった。枝に根がついたものだという。すなわち、「八幡宮造営記」に、臼井興胤がはじめてこの地を定めたとき、自ら持っていた楠の小枝を地に突きさし、もしこの楠の木が生きて葉を生じたら、霊神来たって加護を垂れ給う証としようと言った。その後しだいに繁って、遂に五丈(約15メートル)の大木となったと伝えられている。
 この楠の木のもとに大蛇が住み、ときどき人を捕えては食っていたが、誰が退治したのであろうか、その大蛇の皮だといって、方2.3尺(約66〜99センチメートル)ばかりで、鱗は四文銭ほどのものが実蔵院にあったといわれている。
 舟上に昼寝している漁師の九右衛門さんを呑もうとしたのも、この大蛇である。
担当 菅 勇二