いわゆる大木は、市内でもところどころに見ることができる。
 直弥宝金剛寺の源頼朝公御手植えの桜、坂戸西福寺の大銀杏、上座の大紅葉等である。中でも大蛇にあったと伝えられる五色桜はおもしろい。
 今はなき文珠寺は、景政の冥福を祈り、景政を祀る五良(ゴロウ)神社の隣に建立されたもので、その境内に、周囲一丈(約三メートル)、2.3間(約22.3メートル)四方に枝の繁った桜の大木があった。花のころには人々が群集し、そのために寺も栄えたのだといわれている。そして、この桜の由来はこうである。
 昔、鎌倉権五郎景政は、殊の外武勇に優れ、敵のために眼に矢を射られたが、七日七夜の間、敵を追い、ここに来て鞭を地にさし、しばらく休んだが、やがてその鞭を忘れたままこの地を立ち去った。その鞭が桜であったので、そのまま活きて枝を生じ、八重桜の花が逆に咲いた。それは鞭を逆にさしたためだという。
 また、一説には、この花は五色に咲いたので、あるいは鞭桜といい、また別に五色桜とも伝えている。
 鎌倉権五郎景政の伝説は、特に東北に多いが、目の傷を洗った池や、そのとき血が流れて清水にまじったので、そこに住む魚もみな片目だとかいうのが多いのである。ひとりこの大蛇だけがそんな池や魚がなく、成長する鞭桜となっているのはおもしろく、珍しいことである。
担当 菅 勇二