根郷地区  大篠塚

 
 城(ジョウ)から大篠塚へ入る道の左側に、かなり大きな足跡の形をした凹地がある。人呼んで「デーダラボ-」という。
 広さは1アールあるから、これで計算すると身長は約90メートルで、実に雲つくような大男である。この大男の足跡が「デーダラボー」であるが、印旛郡富里村ではこれを「デーダラボッチ」といい、市原市五井付近では「デーデッポ」と呼んでいる。デーデッポは富士山を引っ張ろうとしてふじづるを探したら、自分の髪の毛より細いので腹をたて、東京湾を渡って千葉から東の方へいったといわれ、富里村では、富士山に腰かけて煙草をすったといわれている。そして市原市五井ではデーデッポが指ではじいた土がとび積もって丸い指塚ができたといわれ、城では、巨人がその足の裏についた泥をはらったら、物井駅付近の水田の中の妙見島ができたのだと伝えている。実に驚くべき大男である。
 この巨人伝説は、この地方のみでなく、東武蔵の丘陵地帯から広く東日本全体に伝えられているが、東北地方ではしだいにその足跡は小さくなっている。いずれにしろ、そのはじいたりけったりした土が、たちまちにして島や小塚を作ったりしているのは、九州の巨人弥五郎の話が、山作りを伴って伝えられていたり、国引きの神話のように、富士山を引きよせようとしたりしているのは、何か日本民族全体に古来共通のものであるように思えるのである。
担当 菅 勇二