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○洲崎渺(ビョウ)々たり 古沙頭(サトウ) (宋的)
江上 天晴れて雲 己に収まる
白鷺(ハクロ) 魚を窺(ウカガ)う 蘆葉の下
只聞く 琴韻(キンイン)の松に入りて
幽(カス)かなるを
○江山(コウザン)を掃き盡して (信斉)
嵐靄(モヤ)を絶つ
朝来 仔細(シサイ)に洲崎を見る
翅(ツバサ)を曝す 鴎鷺(オウロ)平沙(ヘイサ)の上
葉を交える 蒹葭(ケンカ)浅水の浜
◎ふき払ひ 雲も嵐もなかりけり (信斉)
洲崎によする 波も静かに
☆朝から湖面に立ち込めた靄が風に払われて晴れ渡り、洲崎の砂浜も明るくなってきた。陽光の下で、鳥たちが 羽をひろげ曝したり、浅瀬の葉陰で魚を追っている。近くの松林は風に鳴って、琴の音のように聞こえてくる。靄が晴れて明るくなった砂浜を眺めながら、松籟の音を聞く洲崎の光景が第八景である。
『ふき払ひ 雲も嵐もなかりけり 洲崎によする 波も静かに』(臼井八景)は、元禄11年(1698)臼井秀胤(号信斎)と円応寺24代住職宗的の選による。琵琶湖の名勝を詠んだ「近江八景」に準じて選定されたもので、江戸時代には、後の「利根川図志」などによって広く世に知られるようになりました。 |