○布帆(フハン)一幅 清湾に泛(ウカ)び                  (宋的)
  萬頃(バンケイ)の煙波(エンパ) 往きて亦還る
  潭面(タンメン)風休んで 鏡を鋳(イ)るが如く
  影は翠黛(スイタイ)を分かちて 前山を漬(ヒタ)す

○往く時は逆浪(ギャクロウ) 楫(カイ)将(マサ)に折れんとす       (信斉)
  還る処 順風にして 帆己に開く
  一葉の舟中に 順逆を呈し
  両(フタツ)ながら 全(マットウ)うするは天道も 亦難(ガタ)き哉

◎もろ人の 諸戸(師戸)の渡り 行く舟の              (信斉)
       ほのかに見えて かへる夕くれ

☆晴れた日の日暮時、風がやんで波が静まり鏡のような湖面に、対岸の山並が眉墨色にくっきり映し出されている。幾つかの帆舟が、向う岸の師戸へゆったりと帰って行く。一幅の絵のような美しい風景が第四景である。
担当 白木宏繁