○蕭寺りょうりょうとして 九くに遠し           (宋的)
  数株の松樹 霊區を鎖(トザ)す
  江上(コウジョウ)に盤桓(バンカン)して 閑(シズ)かに帰り去れば
  殷々たる鐘声 日くれなんと欲す

○一遍の宗風 己に儼然(ゲンゼン)た           (信斉)
  星霜五百有余年
  鐘声 遥かに響く孤雲の外
  知んぬ 是れ称名(ショウミョウ) 落日の前

◎けふも暮れぬ あはれ幾世をふる寺の        (信斉)
        鐘やむかしの 音に響くらん

☆黄昏が追って、東方の光勝寺から、夕刻を告げる鐘の音が殷々として湖岸に響き渡る。幾歳月を経た古寺であるが、鐘の音だけは今も昔のままに鳴る。その余韻のなかで、霞の棚引く村里や、帆舟の帰りゆく湖面を眺める見事な夕景が第七景である。
担当 白木宏繁