○空しく見る 平湖と攅峰(サンポウ)と         (宋的)
  昔年の層閣 総べて蹤(アト)無し
  弧城の返照 紅(クレナイ)将(マサニ)に 斂(オサ)まらんとす
  近市(キンシ)の浮煙(フエン) 翠(ミドリ)にして 且つ重なる

○暮色蕭條(ショウジョウ)として 古郭深し       (信斉)
  人をして 杖を植(タ)て 衣襟(イキン)を濕らしむ
  知らず 城主今何づこかに在る
  空しく 残陽を見る 廃城址の嶺

◎いく夕べ 入日を峰に 送るらん          (信斉)
       むかしの 遠くなれる古跡

☆ 静かな湖面や、対岸のゆるやかな山々を望む。この城山に、今は昔の城閣が跡形もなくなっている。城跡から見下す村里には薄いタ靄が幾重にも棚引き、落日が城跡を照し、あたりを染めている。夕映えの美しい廃址の嶺に立って、往時を偲びながら残照を眺める秀景が第六景である。



 
担当 白木宏繁